今回の報告資料では、県立高校改革実施計画や令和4年度(令和3年度施策・事業対象)教育委員会の点検・評価など、地域との関係について述べられていました。
私は地域と学校は大切な関係だと思っており、今回コミュニティスクールなど具体的な制度もふまえて、地域と学校の協働について質疑しました。
①コミュニティスクール
児童生徒の教育は、学校だけが抱えるのではなく、学校・家庭・地域がそれぞれの役割を明確にして、協力して取り組むことが必要です。
そのために学校・家庭・地域が持続的に協働して教育にあたることができる学校運営協議会制度いわゆるコミュニティスクールの制度が有効です。
県教育委員会では子どもたちの成長を地域全体で支える社会の実現を目指し、地域と共にある学校づくりを進めていくため、市町村教育委員会がコミュニティスクールを導入することが重要と考えています。
小中学校の状況
佐藤
市町村立小中学校のコミュニティスクールの現状と今後の見通しは
課長
令和3年度末時点で小学校37.3%、中学校が30.5%。その後令和4年度当初には小学校で50.2%、中学校で44.6%と増加。令和4年度末時点では60%を超える設置率となる見込み
佐藤
小中学校でのコミュニティスクールの導入が飛躍的に増加した理由は
課長
関係法令の改正等により設置が各教育委員会の努力義務化となったことや、県によるさまざまな取組みをうけて、市町村教育委員会が積極的に導入を図った結果と考えています
県教育委員会ではすべての市町村教育委員会が参加するコミュニティスクールの推進に関する協議会を毎年度3回開催しています。
今年度は6月に第1回を開催し、有識者による講話と、現在の活動状況について情報を共有しコミュニティスクールの効果的な導入の方策について協議を行いました。
またこの協議会にはコミュニティスクールについての知識や情報、実績を豊富に有する国から委嘱された「CSマイスター」を招き、先進的な情報を提供するなど、導入促進に向けた働きかけを行っています。
愛川町では熱心にコミュニティスクールに取り組んでいる学校がありますが、県がHPに掲載している2022年4月1日付けの市町村別のコミュニティスクールの設置校では愛川町は0校0%となっています。県に確認したところ、愛川町ではこれまで準備を重ね、6月に正式に学校運営協議会制度を開始したということです。
市町村立小中学校でコミュニティスクールを導入するにあたっての課題としては、市町村によって規模や地域資源などの状況がそれぞれ異なり、コミュニティスクール推進に係る課題が異なることから、地域人材の確保であったり、小中学校一体の資金づくりなどそれぞれの市町村のニーズに合った個別の指導助言が必要であるということが1つあげられます。
県としては、コミュニティスクールの推進とともに、地域人材の確保、そして取りまとめの機能をもつ地域学校協働活動と一体的な推進を図っていくことが必要と考えています。
佐藤
コミュニティスクール導入が今年度も飛躍的に増加すると思うが、教職員の負担についてはどう考えているのか
課長
コミュニティスクールの導入前後は組織づくりや会議の運営に関する準備に加えて、保護者や地域住民等の理解を深めていく必要があるため、一定程度の負担があるが、コミュニティスクールは学校・家庭・地域が目標やビジョンを共有して何に取り組む必要があるのか等について協議する機関であるため、学校家庭地域が適切な役割分担をすれば教員の負担が軽減されると考えている。さらにコミュニティスクールと地域人材のとりまとめの機能をもつ地域学校協働活動を一体的に推進することで教師の負担が一層軽減されると期待している。
※文部科学省HP「学校と地域でつくる学びの未来」より
懸念としては、最初立ち上げる時というのはなんでもそうだと思いますが、非常に負担がかかり、それが先生への負担になってしまうと厳しいなという印象を持っていました。
それぞれの活動や地域学校協働活動が進んでいくと業務の軽減化を図れるのであれば、そういった視点からもメリットという点で学校にも共有を図っていただきたいと思いました。
佐藤
県教育委員会として市町村立小中学校におけるコミュニティスクール導入促進今後どのように取組んでいくのか
課長
県教育委員会では設置が進んでいない市町村を個別に訪問し、コミュニティスクール導入に向けて課題等を聞き取り、それぞれの市町村のニーズに応じた効果的な先行事例を提供するなど市町村教育委員会の取組みを支援していきます。
またコミュニティスクールと地域学校協働活動の一体的推進を図るために今後も引き続き市町村教育委員会のコミュニティスクール担当と地域学校協働活動担当を一同に集めた研究協議会を開催していきます。
県立高校の状況
県立高校では、県立高校改革実施計画1期の中ですべての県立高校をコミュニティスクールにすることとなり、平成28年度から令和元年度までの4年間で段階的に導入してきました。平成28年度には5校、29年度には26校、翌年には76校、そして令和元年度には全ての県立高校に導入されました。
各学校で自発的に個々に取り組み始めのではなく、県教育委員会として県立高校改革実施計画の取組みとして一律の導入したということになります。
教育委員会では、毎年各校から提出される学校運営協議会運営計画書及び報告書により、会議の開催状況や地域とともに活動を行った状況などを把握しています。
佐藤
全校導入をして4年目だが、これまでの成果と課題は
また、課題に対してどのような対応をしているのか
室長
成果 コミュニティスクールを導入したことにより、各学校からは学校運営協議会委員からの意見を学校運営に活かすことができたなどの報告があり、地域の理解と協力を得た学校運営の実現に向けて一定の効果が出ている
課題 令和2年度・3年度はコロナの影響もあり、例えば学校運営協議会を書面開催とするなど双方向のやりとりが難しく議論が深まらなかったこと、地域での活動がほとんどできなかったことなどが多くの学校からあげられている
課題への対応 県教育委員会では各学校の特色などに応じ委員を加えることができるように、令和4年4月1日付で規則を改正し、10名以内と定められている学校運営協議会委員の定数について必要な場合は10名以上の委嘱も可能とした
今後は学校の特色などに応じてさらに専門的な意見をいただける方などに委員に加わってもらうことで、学校運営協議会での議論をより深めてもらいたい
また、各校の参考としてもらうために令和3年度に5校のコミュニティスクールの好事例をまとめた学校別取組事例集を作成して周知した
佐藤
コミュニティスクールの設置が進むのはいいことだが、形骸化しているという話もある
課題等が話し合われ、地域学校両方にとってのいい活動になっているのか小中、高校両方に確認をしたい
課長(小中学校)
委員ご指摘のコミュニティスクールの形骸化については、地域全体で子どもを育てるという意識を深め、学校と地域の役割分担や協力体制を組織的・継続的に確立していくといった制度の意義や目的を共有しながら不断の見直しをはかる必要があると認識している
そのため、市町村教育委員会や学校に制度の目的や意義を踏まえ不断の見直しをはかるよう引き続き働きかけていく
室長(県立高校)
県立高校に関しましても今の小中と同様に考えており、現在のところは学校運営協議会の委員からの意見を活かすことなどの一定の成果が出ていると認識している
意見
このコミュニティスクールは全国的な取組みです。神奈川は県立高校に関して全校導入を図ったということですが、他の都道府県も、山口県、広島県、和歌山県など、導入が図られています。
今回点検報告書では、コミュニティスクールの県立高校での導入促進を掲げていますが、今後コロナも明けてくると思いますので、しっかりと定着するよう期待したいと思います。
②地域学校協働活動の推進
※文部科学省「これからの学校と地域」より
※県HPより
令和3年度は愛川高校及び青葉支援学校の2校で地域学校協働活動を実施し、生徒が地域の企業等において就業体験をするインターンシップボランティア事業や学校の環境整備ボランティアなど地域と学校を結び教育活動を支える取組みを行っています。
コロナ禍においても、就業体験ではオンラインを活用して実施したり、学校の環境整備ボランティアでは屋外など換気が良く参加者同士の距離がとれる場所でできる活動を実施するなど工夫しながら取り組んだことで、計画どおりいかないまでも、確実に実施することができたそうです。
佐藤
コミュニティスクールは全校導入などすべての学校がやっていくという方向性が感じられたが、県立学校における地域学校協働活動の実施校が少ない理由は
課長
地域学校協働活動については総合調整の役割を担うコーディネーターである地域学校協働活動推進委員を学校に配置することが円滑な運営につながりる
活動を円滑に進めていくため、推進員には地域や学校の活動に見識を持つ人材が求められているが現状ではそうした人材が不足しているといった課題がある
特に県立学校は広い地域から生徒が通学しているため、小中学校に比べて地域と学校とのつながりが希薄になりがちな面もあり、学校の教育活動等に参加していただける人材確保が難しいということが県立学校での実施に結びつかない理由のひとつだと考えている
地域学校協働活動は、活動をしていくうえで学校と地域がそれぞれお互いの意向やこれまでの過去の蓄積など、地域の活動等をベースに進めていく必要があります。
そのような中で現状では推進員の適任が少ないということと県ではとらえています。
意見
佐藤は地元の愛川高校で受け入れ側に立ったこともあり、推進員の方の動きを見ていましたが、調整は大変そうだなと感じました。
だからこそ先ほどの学校運営協議会との連携が重要だと思いました。
県立学校での地域学校協働活動が今後はぜひ増えるようないろいろ工夫を考えていただくことや、市町村の方は増えているので、さまざまな機会にそういういい事例なども共有していただくことを求めました。
教育施設の複合化
新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方として公共施設との複合化が示されています
地域と学校の関係の中で、校舎の開放など地域に開かれた取組みがあることから、建物のハード面について、県立高校での学校と図書館、福祉施設など他の公共施設との複合化の事例はあるのか質疑しました。
県立学校において建設当初から学校以外の施設と合築し複合化した事例はありませんが、県立綾瀬西高校において平成12年度より校舎の一部を綾瀬市がデイサービスセンターとして使用している事例があります。
当時当該校では学校施設に余裕があったことに加え、普通科の専門コースとして福祉教養コースが設置されていました。
市のサービスセンターを受け入れることが生徒の体験的な学習を行う場として教育活動に寄与することや、ボランティア活動等の体験や高齢者との交流が期待されることが考えられたことから綾瀬市の要請を受け入れたものです。
佐藤
県立学校の複合化については今後どのように考えているのか
課長
現在県立学校については、令和9年度までを計画期間とする新まなびや計画に基づき耐震化工事など安全確保と快適で安心できる学習環境の整備を進めている
学校施設の複合化については、建替え等のタイミングに検討するものと考えており、今後施設の老朽化に伴い建替え等を行う際に地元市町などから複合化の要望があれば学習環境の確保や複合化による効果等を整理し、検討していく
まなびや計画ということで道半ばという風にも思います。
今後は市町の要望などに対して検討していくということですが、コミュニティスクールの展開も見据え、学校施設がコミュニティの中核をつくるという考えもあることから、ぜひ複合化を視野に入れていただくことを求めました。
※県立高校改革実施計画(3期)(令和4年10月策定)より
佐藤
県立高校改革実施計画の中で、コミュニティスクールについて計画に位置付けた経緯は
課長
平成27年1月に県立高校改革の基本的な方針を定める県立高校改革基本計画を策定し、その中で人口減少社会における学校教育の役割なども検討して、県立高校として地域とともにある学校づくりを進めるために、学校と保護者、地域の住民等がともに知恵を出し合い、学校運営に意見を反映させるコミュニティスクールを位置付けた
これを受け平成28年1月に策定した県立高校改革実施計画全体においても、地域協働による学校運営の推進の取組のひとつとしてコミュニティスクールの導入を位置付けた
佐藤
県立高校全校でコミュニティスクールの導入を図り、学校ごとにもいろいろな進捗があると思うが、再編統合をされるとそういったコミュニティスクールや地域学校協働の活動など、学校単位で地域を巻き込んだコミュニティの場がなくなってしまうのではという疑問がある
このあたりはどのように考えているのか、また、このコミュニティスクールの取組みが学校運営協議会の仕組みの中で再編統合によって新校の中にどのように引き継がれていくのか
課長
再編統合の取組みにおいて、それぞれの学校で取り組まれている地域との関係性、そうした協働事業については、原則両校間で協議し、そうした取組みを含めて基本的には新校に引継いでいくという考え方をしている
ただし実際問題として、やはり再編統合区間の距離が大きく離れてしまうとなかなか地理的な面でそうした交流や、時間的な問題費用の負担というのがあると思う
そういったことができるだけ起きないように、再編統合の考え方の中で学校を核とした地域づくりの視点についてはしっかりと検討し、再編統合の組み合わせを考える際には両校間の距離なども重視して慎重に検討していきたい
意見
今回示された県立高校改革実施計画という中では、大井町の高校が再編統合の対象ということです。私の地元の愛川町では1校だけですので強い関心がありました。
再編の流れと、コミュニティスクールで地域と学校の関係をつくっていく流れは逆流していると考えています。
維持管理の面などさまざまな理由から一定の理解はしますが、一方でコミュニティスクールの推進をしておいて学校がなくなってしまうというのは地域信条として難しいものもすごくあると思います。
先ほど施設の話もしましたが、規模を縮小して他の施設との複合化を図り、施設を残すなど、地域にとって学校を残すという視点からも選択の幅、可能性というのも今後検討することを求めました。
文教常任委員会の様子は、県HPから録画映像をご覧いただけます。
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