令和5年4月26日から28日まで、熊本県に伺い、球磨川水系における流域被害の実態と自治体、住民、関係団体の取組、その後の復興、流域治水政策について調査してきました。
昨今の異常気象等による豪雨災害を受けて、国による流域治水関連法が施行され、それらに基づき各都道府県、本県においても流域ごとの協議会が設けられています。
また本県では水防災戦略における関連予算が令和5年度計上され、戦略における計画の中でも流域治水の考えが反映されました。
今後流域治水の考えをハードソフト両面から、予算への反映、県民への意識浸透を図ることを目的に、熊本県の緑の流域治水を参考にするため調査を行いました。
また、令和2年の豪雨災害を受けた復興政策にも目を向け、現地にも趣き調査を行いました。
※立体地図を元に説明を受けました
Ⅰ 令和2年7月豪雨災害における球磨村の初動対応と県の支援について
(1)日 時 令和5年4月26日(水)午後2時から4時まで
(2)場 所 球磨村役場 3階小会議室(熊本県球磨郡球磨村大字渡丙1730番地)
説明後村内各所へ移動
(3)対応者 総務課防災監理監 中渡様
(4)調査概要
球磨村は村全体が山岳地帯で全体の88%が森林であり、村の中央には日本3大急流の1つ球磨川が流れている。
村に通じる主要道は国道219号1本で、浸水想定区域図では球磨川流域のほとんどの集落が浸水すると想定されるなど、厳しい地形条件を有している。
令和2年7月豪雨で記録的短時間大雨情報が8時間の間に3回発表するほどの観測開始以来最大雨量を記録し、25名の命が奪われた。
《球磨村役場の初動対応》
7月3日(金)
17:00 避難準備・高齢者等避難開始
(この段階で動いたのは球磨村と氷川町だけとのこと)
《役場からの防災無線による呼びかけ》 ・避難してほしいが夜中に増水した川の近くを避難させることはかえって危険を増大させる ・明るくなれば状況がわかるはず。持ちこたえてほしい 自衛隊の災害派遣、ヘリの救助状況、市房ダムの情報等 葛藤しつつ言葉を選びながらアドリブで避難を呼びかけた
※村内の防災行政無線77基中運用できたのは52基。 25基は水没、停電、倒壊のため運用できない状態だった
22:20 避難勧告を発令(避難指示)
7月4日(土)
3:30 避難指示(緊急)を発令(緊急安全確保)
5:36 自衛隊が災害派遣要請を受理
12:30 航空自衛隊ヘリによる救助活動開始
12:58 えびの24iの初動対応部隊が千寿園で救助活動開始
7月5日(日)
9:30 神瀬乗光寺において100名救助中
13:30 熊本県の支援チーム5名到着
(熊本地震の経験が生かされ、とても迅速に対応してくれた)
7月6日(月)
5:00 村長、防災管理官、広報担当が桜ドームへ移動開始
(危険が伴う中村長自らの足で見に行くことを決断。反対もあったがそれしか方法がなかった。)
15:00 災害対策本部を桜ドームに移転する旨を決定
(他に安全な場所がなく自然と人が集まっていた。桜ドームに移転することは全く想定していなかった)
※災害対策本部が移された球磨村総合運動公園「さくらドーム」
《被害の概要》
・人的被災状況
千寿園のほか、今村、島田、淋、大坂間、堤岩戸で25名の方が犠牲(溺死)となった。
球磨川の急激な雑炊により、垂直避難では避難しきれなかった。
土砂災害による犠牲者がいなかったのは不幸中の幸いだった。
・建物被害
球磨村全体の35%にあたる建物が被害を受けた。
・公共施設被害
球磨村全体の68%にあたる公共施設が被災。 特に公営住宅は80戸中65戸が被災した。
国道219号の被災により村全体が孤立。
捜索、人命救助活動、応急復旧活動に多大な影響があった。
・孤立集落発生状況
解消まで9日間→球磨村が災害に弱い村であることを証明した。
・水道復旧の状況
今も濁りが出るなど飲料に適さない地域もある。
特に神瀬地区は土石流被害が多く時間を要した。
・避難所の状況
多くの住民が4ヶ月にわたる避難所生活を余儀なくされた。
旧多良木高校及び人吉1中等の施設を利用した村外避難を余儀なくされた。
《豪雨災害を振り返って》
・コロナ禍の複合災害対応
最大592名の避難者を、村内外最大13の施設に分散して収容した。
・住民避難と公助による救助の実態
ハード事業は正常性のバイアスを助長させる要因となった。
村に通じる道路が1本しかなく、悪天候のため航空機が使用できず、自衛隊が球磨村で活 動を開始するまで7時間を要した。
《ポイント》 集落ごとに注意点が違う。水に気をつけなければならない地域、土砂災害に気を付けなければいけない地域、等。そのため住民自らが考え実践し梅雨時期前に防災体制を確立する。
《豪雨災害後の球磨村役場の防災施策》
・村民防災ブロック会議(2023.4.18開催)
梅雨時期前までに準備すべき事項を明らかにする
・全村民が避難について考える日(2023.5.14開催)
避難について住民自らが考え実践し梅雨期前に防災体制を確立
・豪雨対応訓練(熊本県の計画)
・防災学習
住民及び生徒児童が一体となり共助、公助を主体とした災害対応について体験型の防災学習を実施して防災意識の高揚を図る
・その他の防災ソフト施策
自主防災組織の設置、自主防災活動、令和2年7月豪雨災害に係る教訓の伝承 等
《質疑応答》
問 木造の仮設住宅を拝見した。神奈川県でも木造の応急住宅を視察したことがある。家としてそのまま使えるようにプレハブではなく木で作ると聞いた。他県から支援を受けたのか
答 おっしゃるとおり。熊本地震の経験から木造が入ってきたと聞いている。まずは7月中の早い段階から北海道の方からムービングハウスの支援があった。
※球磨村役場に伺う前に市房ダムや水上村の様子も確認
問 流域治水の考え方についてはどうとらえているのか
答 ハードで人の命を守るしかないとずっと思っていたが、ハードとソフトの両輪だと今は思っている。そしてどちらも時間がかかる。ハードはお金と時間がかかって、ソフトは人の意識はそう簡単には変わらない。ただハードは国と県が主体的に行って、自治体はそれに追従するかたち、ソフトは逆。両方がまわらないと人の命は守れない。だからソフト対策は球磨村にいる限り続け住民に根付かせたい。
・考察
球磨村が有する地形(球磨村は球磨川の中流域に位置し、村内の渡地区から狭隘部が始まる)は特殊で、集水域から集めた多くの水が川を下り、渡地区の狭隘部で大きく氾濫する。その結果未明に降った夜間の避難を呼びかける必要性がありました。
球磨川に注ぐ支流が土砂で埋まり、支流の川がそれぞれ溢れ、集落を飲み込みました。
球磨村の集落数は78、球磨川本流沿いは26あり、また52の防災無線の内25基が水没、停電、倒壊で使い物にならなかったとのこと。
このことから、代替えの手段が必要であるとともに、住民の災害への危機感の感度と具体的な日頃の備えが重要と感じました。
防災管理の責任者を1人にしないことも災害を経験したからこその判断だと思います。
様々な課題がありますが、県の果たす役割としては、球磨村村民の避難箇所が村内にかぎらず、周辺の八代市、人吉市などにも及んだ(村外避難)ことから、日ごろから市町村と県があらかじめ、住まう自治体以外の避難場所を指定するなど県が行う広域調整の役割について重要性を感じました。
また小さな自治体ではすぐにマンパワーが限界を迎え、迅速な県の人的支援が必要であると考えられます。
球磨村では熊本県だけでなく、長崎県や広島県などの広域自治体も支援へ駆けつけたそう。球磨川が狭隘部で孤立しやすいからこそ、県が行う球磨川流域治水の役割を日常から浸透させる必要性があります。
特に自分が住む流域のボトルネック箇所や上流域への意識付けが極めて大事です。
国、県、村が行うハード整備は、安心が当たりまえという意識を増長させる(正常性バイアスを助長させる)ため、特に県はそのことを肝に銘じてハード整備を行わなければなりません。ハードとソフトの両方の整備、意識づけが大事であると感じました。
Ⅱ球磨村における森林・集落・道路、治山施設の被害・復興状況について
(1)日 時 令和5年4月27日(木)午前9時から11時まで
(2)場 所 球磨村被害集落など
(3)対応者 球磨村建設課 農林土木係 浦野様
(4)調査概要
球磨村令和2年7月4日の豪雨災害によって、7/3(金)12:00から7/4(土)12:00までの最大24時間雨量で536mmを記録し、7/4(土)3:00から4:00までの1時間で最大雨量78㎜を記録した。
村内にある集落も集落上部の森林や支川、沢沿いの集落は氾濫などに飲み込まれたところもある。県などが行う治山関係施設の被害箇所を視察し、集落被害と復興状況について調査した。
治山と球磨村にそそぐ河川、沢の状況を案内していただきました。 河川と道路の違いがわからなくなり、球磨川に合流する手前の河川があふれかえり、想像がつかないくらいの高さまで川の水かさが増し、家が飲み込まれて、かなりの家が撤去されていました。 作業道や植林地も案内いただき、林業をしている方にもお話を伺うことができました。
《質疑応答》
問 作業もまだまだ時間がかかるように見受けられる。昨年は九州北部豪雨の調査で福岡県を視察した。5年たっても未だ復興作業をしていた。
答 業者の人手不足。入札も不調が続いている。
問 不調の状況は
答 河川などは作業しやすいため業者の方々もそのような箇所から取っていく。どうしても僻地の林道ややりにくい農地などがどんどん不調になり後回しになっている。入札を30本出しても1~2本しか成立しない。
・考察
●嵩上げについて
神瀬地区は球磨川本流に注ぐ支川沿いの集落並びに道路が被害を受けており、支川の上流の森林を抱える山復が崩壊し、土砂、木が支川渓流内に流れ込み、村道、集落を飲み込んだ。また球磨川本流に合流する箇所にあった家屋はバックウォーター現象により、多くが飲み込まれ、復興にあたっては嵩上げを余儀なくされていました。
電柱には嵩上げするマーキングがついており、工事を行っていました。
●森林整備との関係について
事前の情報収集の中で、森林整備の在り方によって、山復崩壊や土砂流入が増えたといった情報があり、特に森林の皆伐地帯は直接豪雨が土を叩くことから、被害が多いのではないかと考えたが、直接見たところでは因果関係などは分かりませんでした。
案内頂いた職員の方によると、必ずしもそうともいいきれないとのこと。
作業道の作り方や維持方法が山を壊す可能性も探りましたが、多くの比較はできませんでした。
●入札不調について
災害箇所が多く、入札不調に終わることが多いとのことです。
不調が続き、被災地が放置されれば、次なる災害が再び来た時にさらなる被害を招いてしまいます。
緊急に復旧する必要がありますが、こうしたところは広域自治体の県が他都道府県、関係団体へ働きかけ、早期に復旧に向けて支援する必要があります。
すでに災害査定などの現場では県職員が支援に入っているという状況も言及されました。
●観光施設への影響について
村内が山岳地帯で、工場などの産業を誘致できない地域では観光産業が基幹産業となる場合があります。
とくに球磨村では急流を使用したラフティングや鍾乳洞の施設である球泉洞があり、それぞれ、球磨川の氾濫と球泉洞上部の山復崩壊による土砂流入でストップをしていましたが、災害を伝えるためにも、早期の事業の復旧が逆に村内への人口流入をもたらし、強いては、球磨村並びに球磨川の災害に目を向け、考えるきっかけになるのではないかと感じました。
Ⅲ球磨川中流域から下流域の被害実態と住民避難の状況及び災害後の災害ボランティアグループの活動について
(1)日 時 令和5年4月27日(木)午後1時から4時まで
(2)場 所 球磨川中流域から下流の被災箇所(八代市吉田町を中心に瀬戸石ダム、
鶴の湯旅館、荒瀬ダム跡、坂本駅、坂本道の駅等
(3)対応者 やっちろドラゴントレイル 吉田代表
(球磨川豪雨災害ボランティアグループ チームドラゴン)
(4)調査概要
《やっちろドラゴントレイルの活動》
吉田代表は、国道219号が寸断されている中、山中のトレイルを進み誰よりも早く被災地に入り状況をレポートし、土木関係者の貴重な情報源となりました。
その後吉田さんが代表を務める「やっちろドラゴントレイル」のレース実行委員会は、ボランティア組織「チームドラゴン」を結成し活動をスタート。
地域のシンボル的な存在である鶴之湯旅館をボランティア拠点にするため地下室と1階の瓦礫を撤去し泥のかき出しを始めました。
引き続きの雨で国道がさらに崩落したため、地元土木業者による復旧作業で坂本地区まで大型車両が入ることができるようになるまで、被災地入りする交通手段、飲み物と食料を自ら調達するなど機動力に富んだトレイルランナーの特性がフルに発揮されました。
翌月開催予定であったレースは中止したが、8月9日当日に76名ものボランティアが集まり、坂本町の8拠点に分かれてチームドラゴンは活動を実施。
手探りで始まった支援作業は次第にその輪を広げ、12月までの約半年間に、57件の家屋復旧作業に延べ1200人が携わりました。
コロナ禍による中止も経た2022年8月やっちろドラゴントレイルは「豪雨災害復興祈念」大会として復活を遂げ、2023年3月には球磨川豪雨災害の復興を後押しする大会「球磨川リバイバルトレイル」も開催しました。
《被災箇所の状況》
・瀬戸石ダム
電源開発が管理するダム。球磨川の洪水時ダムに接する国道から下流域に水が流れていったとされ、瀬戸石ダム自体も発電施設やダムの橋脚がずれる等があった。2022年に再開している。球磨川中流域から(特に瀬戸石ダムの直下)は被害の度合いが強いとのことで、スポットごとに説明を受けた。
瀬戸石駅には、駅前に一軒人家があり洪水に押し流された。吉田代表の知り合いが住んでいたそうだが、災害当日は所用で離れていたため助かったという。
・鶴の湯旅館
洪水時の避難状況と、チームドラゴンがボランティアで被災した旅館の土砂の搬出などをした一連の経緯を伺った。
球磨川流域沿いの人家等は現在嵩上げを求められているため、旅館自体も嵩上げをしなければならず、その嵩上げに数千万の費用が必要であるという。
またその際に営業を1年近く停止しなければならない。
・坂本駅
坂本町は八代市との合併する前は坂本駅近くに役場庁舎などがあったが、ほとんど全ての建物が流された。球磨村~坂本町などは大きな国道が一本しか通っていないため、外部からの車両のアクセスが困難で、チームドラゴンの方は山道を越えて、集落の様子を伝えたという。
・道の駅さかもと
災害時に洪水に飲まれ、復興していた道の駅さかもとを見学。
被災時の建物は営業を停止しており、4月から仮設店舗で営業している。
・質疑応答
問 地元の清川村は上流域の水源地で、水を送り出しているという意識が高いが、なかなか伝わらない。下流域の人に上流域の感覚をどう醸成するか、ものすごく難しい。
答 都市生活が当たり前になっていると思う。災害が来るとこうなる、という言い方も煽ってしまうことになる。SNSの発信も難しい。でも関心は持ってほしい。またあのときの雨が今年降るかもしれない。
問 今年の梅雨も何事もなく過ごせるように、1年1年ですね、本当に。
答 工事が始まれば少し安心できる。それまでは何が起こるか不安。線状降水帯は夜激しくなるというデータも出だした。夕方はパラパラ降る程度だったのに、夜になったら豪雨というトラウマもある。
問 シカ柵は神奈川県が走りと聞いている。トレイルランナーがシカ柵を設置しているのは聞いたことがない。
答 2021年から始めた。ここからの道はやぶ漕ぎどころじゃなかった。ランナーの仲間で整備した。球磨川流域復興に向け本当にちっぽけだけどひとつの道しるべになる。
・考察
「狭隘部に存在するダムの存在が、洪水の力を増大させた」との意識が住民に根強くあります。この球磨川においては瀬戸石ダムや荒瀬ダムのほか川辺川ダム計画に対しても強く感じました。
ダムは様々な機能が存在しますが、歴史的な経緯などからさまざま検討していくことが必要です。土地活用、利水の在り方などから、一筋縄に行かないことが多々あります。
球磨川流域のダムが果たす役割と地域住民にとっての最善な方法で進むことを祈ります。
幹線道路である国道が洪水によって分断されていたところを、チームドラゴンの方は山道を越えて、集落の様子の第一報を伝えたことは、有識者の方においても評価する声があり、地域振興のための山岳イベントのコミュニティが果たした役割は非常に大きいと感じました。
今後も人口減が進む中で、集落における災害時の担い手も少なくなる中、こうした山岳コミュニティの存在を行政は評価をした上で、連携を取ることが求められると感じました。
Ⅳ 熊本県の緑の流域治水政策と復興の取組について
(1)日 時 令和5年4月28日(木)午前9時から10時30分まで
(2)場 所 熊本県庁(熊本県 企画振興部 球磨川流域復興局)
(3)対応者 熊本県 企画振興部 球磨川流域復興局
課長補佐 河野様、流域治水グループリーダー 森本様
(4)調査概要
《くまもと復旧復興有識者会議》
令和2年8月29日有識者会議を開催。球磨川流域の治水と振興について全国的モデルを創出するほどの覚悟を持ち、単に水害からの復旧を求めるのではなく、緑豊かな地域の特性を生かした流域総合振興としての熊本独自のグリーンニューディールが提案された。
《令和2年7月球磨川豪雨検証委員会》
令和2年8月25日にさまざまな観点から検証が行われた。
洪水のピーク量を推定精査を行った結果、河川整備基本方針の基本高水のピーク量(人吉地点7,000㎥)を上回る流量であり、仮に川辺川ダムが存在した場合の効果を算定したところ、現行の川辺川ダム計画だけでは全ての被害を防ぐことはできない結果となった。
《住民等のご意見・ご提案をお聴きする会》
令和2年10月からの約1ヶ月で計30回開催し、延べ467名の意見を聴取した。
《球磨川流域の新たな治水の方向性の表明》
令和2年11月19日、熊本県知事は令和2年7月豪雨による甚大な被害を受けた球磨川流域の治水の方向性として、河川の整備だけでなく、遊水地の活用や森林整備、避難体制の強化を進め、さらに、自然環境との共生を図りながら、流域全体の総合力で安全・安心を実現していく「緑の流域治水」であると考え、その上で、「緑の流域治水」の1つとして、住民の「命」を守り、さらには、地域の宝である「清流」をも守る 「新たな流水型のダム」を、国に求めることを表明した。
《球磨川水系流域治水プロジェクト》
令和3年3月30日に公表。
《河川整備計画の作成》
1級河川で唯一策定されていなかったが、令和4年8月9日に策定・公表された。
① 気候変動の影響による降雨量の増大などを踏まえ、想定し得る最大規模までの洪水を想定し、あらゆる関係者が協働して取り組む「流域治水」を具体的に盛り込んだ計画
② 国管理区間と県管理区間の策定を同時に進めることにより、本川~支川~流域の連携推進を図った計画
→この2点を併せ持った全国で初めての計画
・質疑応答
問 災害に向けた取組みは村などが実施しているのか
答 財政規模が小さい、マンパワーが不足するなどの課題がある地自体もあるため、県が代替して実施している事業もある(災害公営住宅の建設など)
問 緑の流域治水として、通常の森林整備にプラスアルファ加えていることはあるのか。
答 各地で流木などの被害も多く、河川だけでなく山の整備が大切という考えは浸透した。令和3年度に林地保全に配慮した林業のガイドラインを設定して、林業の施行業者等に災害が起こりにくい山づくりを示して啓蒙に取り組んだり、森林の再生だったり、作業道の推進、いろいろなことに取り組んでいる
問 流域治水の考えをどうやって浸透させていくのか
答 まさに今から計画を立てたものを現場に落とし込んでいく中では流域の住民、県民の理解協力が不可欠。取組みの見える化として動画や立体地図を作成し3Ⅾで見ていただくと、こんな地形になっているんだと改めて気付かれる住民も多かった。小中高生など若い世代に事実や地形的な特徴を周知してほしいとの声もいただいた。作成したコンテンツを活用して周知を進めていきたい。
・考察
熊本県の流域治水政策に関しては、令和2年球磨川の豪雨災害と大きく関連していて、復興計画と綿密な関係があります。
ここが豪雨などで、被災をしてない都道府県との違いであると感じました。
また、川辺川ダム、荒瀬ダム撤去を始め、ダム建設の是非を判断してきた歴史から、流域治水に関して、ダムに頼らずに対応していくという姿勢、「緑の」という通り、森林政策を重視していく姿勢がみて取れると感じました。(実際の森林政策は課題が多くあるとも思う)
球磨川流域のグリーンニューディール策として持続可能な地域の実現のために、新しいAIやICTの活用と地域資源の活用、上流から下流域までの様々な主体・行うべき施策が示されており、災害を乗り越えようとする球磨川流域地域だからこそ生み出されてくる政策であると感じました。
こうした流域意識に様々な施策を結び付けることは、自然の豊かさと脅威を日常から感じさせるもので、政策としては的を得ている一方で、流域意識を県民に普及させることは、課題があるとも感じます。
熊本県は流域治水の考えを動画で作成したり、熊本県の地形を見ることができる3Ⅾマップを全市町村に配布しています。
本県では令和元年東日本台風で城山ダムの緊急放流、宮ケ瀬ダムにおいても緊急放流の直前までいったとされ、令和2年流域治水関連の法律により、相模川や各河川で流域協議会ができたところですが、今後も上下流様々な地域に住む県民が流域意識をもち、適切に住まいの選択や災害時の避難に繋げることが求められ、流域治水を伝えるべき県の役割は非常に大きい。
令和5年度から行われる水防災戦略においても、流域治水の考えが取り入れられたことから今後、県民が流域を感じるための様々な政策が求められます。
今回の視察では、現地含め大変丁寧にご説明いただきました。1日も早い復興をご祈念申し上げますとともに、ご案内くださった皆様に心から感謝申し上げます。
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