令和3年3月10日、子ども・子育て・高齢社会特別委員会が開催され、児童虐待対策やいじめ等への対策について県からの説明がありました。
佐藤は豊かな体験機会の提供や人間関係作りの視点から不登校に関する県の取組みや、中途退学を防ぐための県の支援について質疑を行いました。
(1)公立小・中学校における不登校支援について
公立小中学校における不登校の児童生徒数は増加しています。
新たな不登校を未然に防ぐことができていない要因については、児童・生徒全体に見られるコミュニケーションスキルの不足等の課題に対し、学校による豊かな人間関係づくり等の取組が十分とはいえないということや、「不登校は問題行動ではないこと」「適度な休養の必要性」 等の、いわゆる「教育機会確保法」の趣旨を踏まえ、学校が欠席理由を不登校と積極的に捉えるようになったこと も、増加の一因と考えられます。
※特別委員会資料より
不登校の児童・生徒の支援にはスクールカウンセラーが活用されています。
●スクールカウンセラー
子どもたちが抱えるさまざまな課題について、心理の専門家としてカウンセリングを中心とした児童生徒保護者との相談業務や指導助言を行い、教職員や関係機関と連携しながら未然防止や早期解決に向けた支援を行う。
スクールカウンセラーは政令市を除くすべての中学校174校に週1回1名ずつ配置され、中学校区内の小学校も対応しています。
不登校の児童生徒の対応をする際には、児童生徒が社会的な自立や学校生活の再開への気持ちをつくれるようにするとともに、保護者の不安や焦り等の複雑な感情を受けとめ、保護者が落ち着いて適切な対応を図れるよう対応します。
さらには学級担任や関係職員が不登校の児童生徒を家庭訪問する際に学校長の許可を得て、スクールカウンセラーを同行して本人と話をすることや、保護者に対する助言を行うこともあるそうです。
佐藤 子どもたちに人間関係づくりのスキルを身に付けるために行っている取組みは
課長 ソーシャルスキルトレーニングを実施するほか学級担任等へ助言
子どもの人間関係づくりのスキルアップのため、スクールカウンセラーはソーシャルスキルトレーニングとして例えばイラストを用いて自分の気持ちを言葉で伝えるエクササイズ等を行っています。
また一部生徒が抱える心理的課題に児童生徒の特性に応じた人間関係づくりの指導支援の方法について、スクールカウンセラーは学級担任や養護教諭に対して助言を行っています。
●フリースクール
※特別委員会資料より
一方でフリースクール等の学校外の機関で相談・指導を受けた不登校の児童・生徒も増加しています。多様な学びという点でも必要な取組みであると考えます。
佐藤 フリースクールでの自然体験活動などの取組みは
課長 野外キャンプや天体観測等のほか伝統芸能の体験など多様な活動を取り入れている
とくに自然体験活動では、子どもたちが人や自然と触れ合えることにより、自分自身と向き合い、社会的な自立や学校生活の再開に向けた次の一歩を踏み出せるようサポートを行っています。
県教育委員会では、不登校対策として県立足柄ふれあいの村を活動場所として日常を離れた自然豊かな環境の中でさまざまな体験活動を行う「きんたろうキャンプ」の取組みを実施しています。
このキャンプは日帰りによる自然体験プログラムから、最長4泊5日の宿泊型の野外活動プログラムまでを展開しており、令和元年度は児童生徒のべ186名、保護者は127名の参加がありました。
佐藤 体験活動やフリースクール等の情報をどのように発信するのか
課長 不登校相談会や見学会を実施するほか、学校内の検討会議で伝える
県教育委員会では年間9回行っている不登校相談会において、フリースクール等や県立足柄ふれあいの村の相談窓口を設置し、来場された児童・生徒やその保護者にフリースクール等の取組みやきんたろうキャンプの情報を伝えています。
また、毎年9~11月にかけて各フリースクール等と連携してフリースクール等見学会を実施し、不登校で悩んでいる児童・生徒や保護者等が各フリースクール等を訪れ、活動を見学するとともにフリースクール等の担当者と懇談をできる機会を設けています。
学校では、不登校の児童生徒を支援する検討会議において学級担任や教育相談コーディネーター、スクールカウンセラー等が必要に応じて体験活動やフリースクールの情報を児童・生徒やその保護者に伝えています。
※自然の中で遊ぶ「野外保育 風の森」の子どもたち ブログはこちら
学校の中の多様化する問題に対して、児童・生徒の方も学校に合わせるというよりは、学校側から少しニーズを探っていくようなことが必要ではないかと感じました。
人間関係に課題を感じた際には、一度リセットする時間が大切であると考えます。
そのため、今回自然体験活動の取組みについて取り上げました。
例えば徳島県では、地方と都市の2つの学校の行き来を容易にし、双方で教育を受けることができる新しい学校のかたちとして「デュアルスクール」という取組みを行っています。
また、清川村では10年前まで「県立清川青少年の家」において不登校の生徒を受け入れたり、宮ケ瀬湖や丹沢の山々などの自然の中でキャンプ教室や自然観察を行っていました。
不登校の支援も含め、子どもたちにとって自然体験活動はとても大切だと感じています。
県としての取組みを求めました。
(2)中途退学を防ぐための支援
中途退学の理由として、家庭の事情が考えられます。
神奈川県問題行動不登校調査によると、中途退学者2,354人のうち、経済的理由によるものが2人、家庭の事情によるものが94人で、全体からすると少ない人数であるものの、例えば学業不振や進路変更による退学者の中にも、背景として経済的な問題や家庭の事情が含まれている場合もある可能性があると県では捉えています。
家庭の事情による退学率については、全日制は全体の中の3.9%、定時制は全体の中の6.1%で、全日制に比べて定時制の方が家庭の事情などによる退学率が高い傾向があり、この傾向は例年同様の状況です。
高校生ぐらいの年代になると、自分から家庭の事情を周囲や教員に相談することに抵抗を感じる生徒も多いため、学校では教員の日常的な観察により生徒の変化に気づき、家庭の事情などで学校生活が不安定になっている生徒に対し、社会福祉の専門家である「スクールソーシャルワーカー」につなぎます。
●スクールソーシャルワーカー
家庭など生徒が置かれた環境への働きかけなどを通じて生徒の学校生活の安定を支援する。課題を解決するために活用できる社会資源、公的扶助制度などの情報について、教職員や本人、保護者に情報提供する。
保護者や生徒本人の了解が得られれれば、スクールソーシャルワーカーが直接関係機関に情報を提供し、必要があれば現地にも同行する。
高校の場合は生徒を介して保護者とやりとりするというのが一般的になりますが、スクールソーシャルワーカーが直接保護者と面談したり家庭訪問を行って助言することもあるそうです。特に外国につながりのある生徒の対応などの場合には、保護者が関係機関に相談する際に同行するといったケースがあります。
佐藤 スクールソーシャルワーカーは現在の人数で役割を果たせているのか
課長 完全とまでは言えないが、一定程度の対応はできている
県立学校におけるスクールソーシャルワーカーの配置は、小中学校への配置より遅れて、平成27年度から開始しました。
開始した平成27年度は10名、28年度は20名、29年度は25名、30年度は30名と拡充し、現在は1人のスクールソーシャルワーカーが平均して5校程度を担当し、週2日の勤務状況となっています。
佐藤 退学した生徒に対して引き続き支援することは可能か
課長 退学をしても元の担任や部活動の顧問に相談にくる生徒はおり、相談にのっている
教員もスクールソーシャルワーカーも基本的には県立学校に在籍している生徒への対応を優先していますが、家庭の事情などで高校を中退する退学する生徒には周囲に相談できるおとながいないケースもあると考えています。そうした生徒のために学校は、まずは在学中にスクールソーシャルワーカーと連携し、ハローワークやかながわ若者就職支援センター、県内に6箇所ある地域若者サポートステーションなど進学後相談できる窓口につないで退学後の進路について支援しています。
退学した後でもフォロー体制があるということで少し安心しました。
社会から孤立しないために取組みを続けていただくことを求めました。
一方で、スクールソーシャルワーカーの方の話を聞かせていただいたところ、家庭が複雑化し地域課題もかなりある中、深くヒアリングしたり、関係をつくるのに勤務の範囲だとなかなか時間が足りないとのことでした。
課題の解決には非常に時間がかかることから、現場の声を認識していただくことを求めました。
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