決算特別委員会は約1ヶ月に渡り、3000以上ある県の事業を会派のメンバーで分担しながら質疑を行ってきました。
最終日の11月2日に、会派を代表して意見表明をしました。
令和元年度は、ラグビーワールドカップ2019が開催され大盛況のうちに幕を閉じた一方で、台風15号、19号による災害や新型コロナウイルスの感染拡大など県民の生命や財産に大きな影響を及ぼす災害等が多発しました。
そうした状況の中、本県の令和元年度一般会計歳入歳出決算は、歳入、歳出とも前年度を上回ったものの、単年度収支は12億6,900余万円の赤字で2年連続の赤字となっており、県税収入も2年連続での減収と厳しい決算となっています。
また、県の財政状況は、
●歳入面
新型コロナウイルス感染症の影響による企業収益の減少や消費活動の落ち込みから、令和2年度当初予算に対し、県税と地方譲与税を合わせて900億円規模の減収が見込まれる
●歳出面
新型コロナウイルス感染症対策に加え、今後も頻発化・激甚化が懸念される自然災害への対応などにも追加の財政需要が生じる可能性がある
一層慎重な財政運営を行う状況にあります。
今後は、更なる歳入の確保と一層の事業の選択・集中を進めるとともに、県が取り組むそれぞれの事業において、大きな効果、成果を上げていくことが求められます。
そうした視点から、この決算特別委員会において質疑を行ってきました。
主な質疑内容と要望について、次のとおりお知らせします。
一般会計決算
①地方創生の推進
県では、人口減少に歯止めをかけつつ、地域での住みよい環境を確保し、将来にわたって活力ある社会を維持していくため、「神奈川県まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定して取り組んできました。
令和元年度は、総合戦略の最終年度でしたが、ラグビーワールドカップの開催による地域の盛り上がりがあった一方で、新型コロナウイルスによる影響は大きく、令和2年度以降もその影響は続いています。
総合戦略は第2期に入りましたが、目標に沿った取組が難しくなってきている部分もあることから、コロナ禍、コロナ後の実態にあった目標に見直していくよう求めました。
②市町村地域防災力強化事業費の補助
※台風19号襲来翌日の城山ダム
「市町村地域防災力強化事業費補助」は、防災に関する取組を市町村の実情に応じて柔軟に取り組める市町村ニーズが高いメニュー補助制度となっています。
令和元年度には台風15号と19号による大きな被害が発生するなど、県内市町村にとって大規模災害への備えは重要な課題です。
新型コロナウイルスをはじめ、様々な複合災害への対策も市町村では求められていることから、連携を深め一層の拡充等に取り組むよう求めました。
③被災者生活再建支援
令和元年は大規模な台風に見舞われ、被災者生活再建支援法に基づく、各都道府県からの拠出による「被災者生活再建支援基金出えん金」の残高が減少してきたことから、県は25億5,262万余円の追加拠出を行いました。
一方、本県も初めて被災者生活再建支援を受けました。
この被災者の生活再建に向けた都道府県レベルによる相互扶助の制度は非常に有意義と考えますが、この法に基づく基金による支援を受けるためには一定の要件があるため、対象とならない地域の被災世帯へは県独自による支援を行っています。
同じ県内での被災であるにもかかわらず、法の適用を受けるか否かによって支援金の受給に不公平が生じることがないよう、制度改正を求めるとともに、引き続き法の適用外となる被災世帯に対する県独自の支援を継続するよう求めました。
④SDGsの推進
※清川村が住民のみなさんに配布したエコバッグ
県は、国が推進する「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」の両方に選定されていますが、ベルテルスマン財団のSDGs達成状況を分析したレポートによれば、日本は17位と昨年から2つ順位を落としています。
今後、さらに国レベル、地域レベルでの取組が重要と感じており、「SDGsつながりポイント」事業は、地域レベルでの行動の後押しにつながるものと期待しています。
SDGsの効果は数字として見えにくいですが、様々な取組がSDGsにつながっているということを若い世代の人たちに気付いてもらえるよう、県としてSDGsの推進を図っていくよう求めました。
⑤ヘルスケア・ニューフロンティアの推進(未病指標)
※昨年のME-BYOサミットの様子
医療・介護・福祉費が年々増える中、ヘルスケア・ニューフロンティアの推進は重要です。
スマートフォンアプリを利用した「マイME-BYOカルテ」から未病の見える化が始まり、さらに、生活習慣の改善のきっかけとして未病指標の構築に県は取り組んできました。
コロナ禍の中、県民の健康意識も高まっており、日々の体調変化が記録できる「マイME-BYOカルテ」やカルテに実装される「未病指標」の機能は有効なものと考えます。
神奈川県SDGs未来都市計画では、2030年に未病指標の利用者100万人を目標に掲げていますが、単に利用者数の向上はもちろんですが、実際にアプリを使ってもらうこと重要です。県として未病改善取組を更に推進するよう求めました。
⑥男女共同参画の取組み
※かながわ女性の活躍応援団(県HPより)
女性活躍がうたわれていますが、政策決定の場での女性の参画は未だ進んでいません。
今回特に指摘したことは、かながわ女性の活躍応援団の構成メンバー及び中小企業経営者からなる、かながわ女性の活躍応援サポーターの全員が男性となっていることです。
女性の経営者もいるわけで、こうした取組においても男女半々で構成されることが望ましいと考えます。すべての県施策の場にジェンダーの視点を持つよう強く求めました。
⑦神奈川県子どもの貧困対策推進計画
※子どもの貧困対策推進計画(県HPより)
神奈川県子どもの貧困対策推進計画は令和2年3月に改訂され、「社会全体で子どもの貧困対策に取り組むための基盤づくり」を主要施策として新たに位置付けています。
公立小学校における就学援助の状況をみると、平成30年度は県全体で5,629人と前年度よりも1割ほど増えており、就学援助を必要とする子ども達はまだまだ増えている状況です。
さらには、新型コロナウイルス感染症は、社会に非常に大きな影響を及ぼしており、生活困窮者の数も増えてきています。そのような状況の中、地域共生社会の実現に向けて、貧困対策の取組を進めるよう求めました。
⑧あゆ種苗生産業務委託
※詳細は質疑2日目のブログ参照
農業・林業・水産業・畜産業などの一次産業の自給率向上が求められる中、水産業における鮎の自給体制の構築は令和元年度において特筆すべき事項でした。
本県のあゆ漁獲量は全国第2位で、遊漁者数も全国トップクラスであり、内水面漁業にとって重要な魚種となっています。そうした中、令和元年度に、あゆ中間育成施設が完成したことにより、放流用種苗の県内産自給率が24%から54%へ向上することは評価できます。
一方で、中間育成施設へあゆの供給を行っているあゆ種苗生産業務委託において、今後さらに生産量を増やすためには、あゆの卵の提供時期の早期化や老朽化しつつある施設の改修といった取組が必要となってくることから、県内産あゆの自給率向上に向け、更なる取組みの促進と、他の一次産業においても自給率の向上につながるような取組みを求めました。
⑨エネルギー政策の推進
※あつぎ市民発電所の収穫祭に参加しました
2050年に向けて、温室効果ガスを大幅に削減するという目標に向け、エネルギーの転換、脱炭素化への取り組みが求められています。
その中で令和元年度2月、県ではかながわ気候非常事態宣言を発出しました。
今まさに再生可能エネルギーの取組の推進が不可欠です。
県では、蓄電池の導入支援等に取り組み、かながわスマートエネルギー計画において、「県内の年間電力消費量に対する分散型電源による発電量の割合」を2020年度で25%にすることを目標としていますが、2018年度で15.7%と目標達成は大変厳しい状況となっています。
会派では、これまでも「再生可能エネルギーの導入促進」について提言を行ってきたところであり、蓄電池は災害時の電力確保にも有用ということで関心が高まっているものの、価格はまだ高い状況となっています。
今後も、補助制度による支援にとどまらず計画の目標達成に向け、着実に取り組むよう求めました。
⑩急傾斜地崩壊対策
※詳細は質疑2日目のブログ参照
※台風19号見回りの際の写真
激甚化する自然災害への対策として、土木費は年々重要さを増しています。
特に、急傾斜地災害の不安は強く、急傾斜地を抱える地域に住む住民から、早期の改善を求められています。
災害に強いまちづくりを進めるため、県では、土砂災害防止施設の整備とともに、土砂災害が発生するおそれがある土地の区域を明らかにするための必要な調査等を行い、区域の指定を進めています。
がけ崩れから、県民の安全・安心を守るため、ただ指定して終わりにするのではなく、日頃から住民と丁寧に指定箇所に関して、注意を促すなど本当のソフト対策になるよう努めるとともに、策定された水防災戦略にも基づき、ハード、ソフトの両面から最大限の効果が発揮されるよう取組を進めるよう求めますした。
⑪県立高等学校におけるICTを活用した教育
※詳細は質疑3日目のブログ参照
県は、GIGAスクール構想に先立ち、教育費にICT端末整備に関する大きな予算を計上し、令和元年度までにすべての県立高等学校において無線LANの環境整備が完了させました。
このことはBYODの取組とも合わせて県立高校においてコロナ禍で途切れることなく学びの環境を確保することができた点で評価できます。
しかし、ICT機器や無線LAN環境を整備しても、指導する教員間でICT機器等の活用にスキルの差が生じれば、教育内容に大きな影響が生じることになります。
コロナ禍でICTの活用が一気に進んだところもありますが、教員へのサポートが必要な部分がまだあると考えます。
そこで、県立高校改革実施計画で指定された「ICT利活用授業研究推進校」の先進的な実践例の共有等を図るとともに、教員の業務負担軽減の観点から民間への教材作成の委託等についても検討を進め、ICT機器を活用した教育の更なる充実に努めるよう求めました。
⑫天然記念物の保護の取組み
※詳細は質疑3日目のブログ参照
近年、相次ぐ台風等の自然災害により、天然記念物として文化財指定されている樹木や樹林についての被害が多発しており、所有者は、その保護に苦慮されている現状があります。
保存修理等に要する予算の確保に加え、文化財の保存に要する資金調達や保存方法の団体間での共有といった所有者に寄り添った支援を行い、神奈川県文化財保存活用大綱が令和元年11月に策定されたことも踏まえつつ、文化財の魅力発信そして保存の取組を最大化できるよう求めました。
⑬交通安全施設の適切な維持管理
※詳細は質疑3日目のブログ参照
道路利用者の交通の安全と円滑を確保するためには、交通信号機や道路標示の整備・維持管理が重要となりますが、県内では更新が滞った交通信号機や、見えにくくなった道路標示が見受けられる状況にあります。
県民の安全安心を確保する観点からも、確実な予算の確保と執行に取り組むよう求めるとともに、また今後財政の先行きは読めないことから、コスト面の不断の見直し、また道路管理者から道路標示を補修したいという要望もあることから、より迅速に対応するなど業務の効率化に取り組むよう求めました。
⑭水源環境保全・再生事業会計における市町村事業推進費
※詳細は質疑2日目のブログ参照
市町村が実施する生活排水施設の整備等といった、一般的な行政水準を超える特別対策事業について、県では、個人県民税の超過課税等を財源に支援を行っています。
県内生活排水処理率は98%となっている一方で、ダム集水域における処理率は71%とまだ低いことから、引き続き地域の実状に合わせて、処理率の向上に取り組むよう求めました。
また老朽化する排水処理施設の維持管理費用は今後大きな課題となります。
地域の水質保全の観点から、助成対象に含めること含め、広域自治体としてできるあらゆる方法を検討することを求めました。
公営企業決算
①県営水道における災害時の体制強化と揚水ポンプ所停電対策事業
※詳細は質疑1日目のブログ参照
近年、地震以外にも台風や豪雨など様々な自然災害が発生しておりますが、水道は県民が社会生活を営む上で要となるライフラインです。
災害時に迅速に対応できるよう、断水をした場合の被害戸数や被害金額、対応に必要な人員などを想定し、災害対策訓練に役立てていくよう求めました。
また、水道システムの再構築のため5事業者で広域的な連携に取り組んでいくため検討会を設置したとのことですが、災害が同時多発した場合、5事業者同士の速やかな連携が必要です。災害に強い水道事業の構築にも取り組むよう求めました。
②ダム貯水池のしゅんせつ土砂の有効活用
※詳細は質疑1日目のブログ参照
この事業はダム貯水量の回復としゅんせつ土砂の養浜などへの活用を図れる一石二鳥の取組みです。
激甚化する自然災害に対して様々な課題はありますが、限られた財源で最大の事業効果を生むよう部局の連携を深めるよう、不断の努力を求めました。
以上のとおり、意見と要望を述べ、
〇令和元年度神奈川県公営企業決算の認定について
〇令和元年度神奈川県一般会計歳入歳出決算及び同年度神奈川県特別会計歳入歳出決算の認定
について賛成の意見表明を行いました。
当日の質疑の様子は、県HPからご覧いただけます。
すでに来年度の予算協議が始まっていますが、令和3年度は県税収入の減収や介護医療児童関係の増額により、1,100億円の財源不足が見込まれています。
本県の財政は危機的状況であることを念頭に、本委員会での指摘事項を受けとめ、予算編成に取り組んでいただきたいと考えます。
11月25日(水)から第3回定例会の後半がスタートします。
佐藤も一般質問に登壇する予定です。
愛甲郡の身近な課題や、県政の諸課題について向き合ってまいります。
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