令和3年3月3日、国際文化観光・スポーツ常任委員会が開催されました。
佐藤は観光の本格再開を見据え、県の取組みの海外に向けた発信についてのほか、シェアサイクル事業に関して質疑を行いました。
①外国人観光客に向けた発信
新型コロナウイルス感染症については、未だ見通しがつかない状況ですが、感染防止対策をしながら、観光の本格再開に向けて準備をしていく必要があります。
会派でも、第2回定例会の一般質問において、「外国人観光客のこれまで培った海外関係とつながるあらゆる媒体を通して、本県のコロナ対策などをいち早く、正確に、継続して発信するべき」と求めたところですが、今後外国人観光客に向けてどのような発信を行っていくか確認しました。
県では、コロナ収束後速やかにプロモーションが再開できるよう、ニーズの情報収集に努めたほか、中国、台湾、ベトナムに設置する観光レップや観光情報ウェブサイト「Tokyo Day Trip - Kanagawa Travel Info -」を通じて、本県の魅力とあわせて、新型コロナ感染防止に向けた本県の安全安心の取組みを周知していくとのことです。
観光レップとは?
外国人観光客のさらなる誘致に向け、海外のメディアや旅行事業者等に対して、本県への観光客誘致のためのセールスを現地で行う「県の観光セールスの代理人」のこと。
2016年10月25日から中国、台湾、インドネシア、マレーシア、ベトナムの5ヶ国に設置されている。
※外国語観光情報ウェブサイト「Tokyo Day Trip - Kanagawa Travel Info -」より
佐藤 本県を選んでいただくために観光地一体となって感染防止に取り組むべき
課長 観光地のほか交通機関も含めるなど地域一体で感染防止対策に取り組む動画を作成
県は、コロナ禍の今を助走期間ととらえ、まずは地域一体となって感染防止の取組みを積極的に行っていくことが大事であるとし、9月補正予算で計上された観光モデル創出事業費の中で、観光地だけでなく、主要な動線であるバス交通機関を含めて地域一体となって感染防止対策に取り組んでいる姿を動画に収め、上記ウェブサイト「Tokyo Day Trip」を通じて発信していくとのことです。
この動画のほか、在日ライターが観光地を巡り、そこで感染防止対策を体験する動画を各観光地ごとが作製され、ウェブサイト「tsunagu Japan」にてすでに公開されています。
tsunaguJapanのサイトを確認しましたが、感染対策のバナーはあったものの、目立たない印象を受けました。
一方で、SNSの情報を見ていると、日本の観光地が映える写真がメインで、なかなか感染対策を取り上げられていないのが現状です。
神奈川県をつなぎとめておくという意味で常に情報を発信しておく必要があると考えますが、観光情報については、SNSが入り口となることが多いため、SNSへの発信の中で感染対策に関する情報をシェアしていただくことを伝えました。
②国内外の観光客を引きつける「高付加価値コンテンツ」
海外からの入国制限が解除されるときに備え、コロナ禍の今だからこそ魅力的なコンテンツを作ることが重要です。
そこで来年度の神奈川県観光魅力創造協議会運営事業について伺いました。
県では、MICEや富裕層など、テーマ別にターゲットを定め、周遊・宿泊に繋がるような地域の魅力的なコンテンツの磨き上げに取り組んできました。
現在は、コロナ禍にあって海外旅行に行けない国内の富裕層や今年開催予定の東京2020を契機に比較的旅行需要の早期回復が見込まれると言われている外国人富裕層など、国内外の観光客をひきつける、特別感のあるコンテンツの充実に取り組むこととしています。
●神奈川県観光魅力創造協議会とは?
ラグビーワールドカップ2019™及び東京2020オリパラを契機に、国内外の観光客の県内誘致を推進し、地域経済の活性化を図るため、県内の多彩な観光資源の発掘・磨き上げや魅力的な周遊ルートの開発を行うことを目的に設置されました。
協議会では、県内の観光資源の発掘や周遊モデルルート等を作成しています。
これらを旅行会社等に提示して、ツアー商品化などを要請し、多言語観光情報Webサイト「Tokyo Day Trip -Kanagawa Travel Info-」において情報発信しています。
●MICEとは?
MICEとは、企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字のことであり、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称のこと。
※外国語観光情報ウェブサイト「Tokyo Day Trip - Kanagawa Travel Info -」より
佐藤 特別感のある動画コンテンツについて、なぜ協議会運営費の中で取り組むのか
課長 高付加価値コンテンツを仕立てるためには地元の皆様と連携協力が不可欠。
協議会の枠組みを活用し、関係者からの意見や協力をいただく
協議会は、市町村関係団体や、観光協会ほか、交通事業者、宿泊関係団体など54団体で構成されています。その地域ならではの本物の体験、通常観光客が入ることができない施設の体験など特別感のある高付加価値コンテンツを開発するためには、地域の実情に詳しい地元の観光協会や観光事業者の皆様との連携、協力が不可欠です。
これまで協議会では、2,700を超える観光資源を発掘し、その中で富裕層向けの高付加価値コンテンツは12箇所となっています。
●鎌倉長谷の能舞台での能楽鑑賞や、能の体験
●鎌倉円覚寺での座禅、本物の日本刀での居合切り体験 など
今年度は10件の開発に取り組んでいます。
●鎌倉円覚寺の国宝、舎利殿
※一般公開はしていませんが、特別見学やプライベートな空間での僧侶との読経、座禅
●日本を代表する芸術家の北王子廬山人がひらいた鎌倉の登り窯「其中窯」での作陶体験
そこでのミシュラン掲載店料理人による地場の旬な食材を活用した食のおもてなし
●箱根の岡田美術館における閉館後の貸し切りで学芸員が案内する特別なプラン など
来年度は5件程度の開発を予定しています。
開発にあたっては、1件1件県の職員、旅行会社の方が、具体的にどういうことができて、どういうことができないのか、課題を整理しながら訪問とお願いをしており、その中でさまざまな課題が出てくるため、簡単にたくさん作ることはできないとのことです。
一方で受け入れる側は、「積極的にやっていきたい」、もしくは「こういう特別な旅行をやりたい」と一緒に企画して考えていただけるところも多いため、まず数よりもお客様に刺さるような質の高いものを開発していきたいとのことです。
佐藤 コンテンツも大事だが、いかに誘客につないでいくのか
課長 海外の旅行会社向けにオンラインセミナーやツアーを実施して広く発信する
今年度開発したコンテンツは2月に主に富裕層向けの旅行商品を扱っているヨーロッパの旅行会社を対象としたオンライン商品セミナーを開催し、製品化に向けてPRしたほか、米国やオーストラリア等の旅行会社を対象に県内観光地を紹介するオンラインツアーを実施しました。
セミナーには81名が参加され、アンケートを実施したところ7割以上の旅行会社から紹介されたコンテンツにぜひお客様を送客したいと回答をいただいたとのことです。
特別感のある高付加価値コンテンツの開発は、海外からの富裕層旅行者の来訪を促すために有効な取組みであり、今後期待が持てる一方で、特別感のあるコンテンツに仕立てるためには施設側の協力が不可欠だが、施設側におけるマンパワーの問題や、通常入ることができない場所の時間帯をどこまで開放できるかなど、さまざまな制約があり、なかなか1度に短期間での開発が難しいことが課題です。
佐藤 コロナへの対応も踏まえ、今後どのように取り組んでいくのか
課長 高付加価値コンテンツの開発とガイドの人材の育成、両方をセットで取り組むことで外国人旅行者の県内刺激での満足度を高めリピーターの確保を図りたい
来年度も高付加価値コンテンツの開発は継続される予定ですが、協議会の構成員の皆様からの協力をいただくなど関係者を巻き込みながら進めていくことが、地域の特色を活かしたコンテンツ開発を進めていく中で重要です。
あわせて、こうしたコンテンツの魅力を国内外の観光客に伝え、体感していただくため、コンテンツに関する歴史・文化等の背景やコンテンツのテーマ、ストーリー等に精通する専門性の高いガイドの育成等ソフト面の充実にも取り組んでいくとのことです。
コロナ禍という今の時期でなければできないことがあり、しっかり作りこんだものは今後も外国人だけではなく日本人にも需要があると考えます。
また、このような事業をきっかけとし、地域の方も地域を掘り起こそうとする流れがあると地元にいても感じており、この流れの手助けとなることを県に期待しています。
経費としては、予算2,111万円の中の1つの事業となり、少ない経費でも高い効果をあげられるよう取り組みを求めました。
③シェアサイクル事業の現状
シェアサイクルは、複数の観光地を周遊する手段として有効と言われており、新型コロナの感染拡大によって、三密を避ける観点からもサイクリングなどが注目を集めています。
県では、湘南地域でのシェアサイクルの普及に向けた取組を推進しています。
湘南地域には海沿いを東西に走る国道134号に沿って鎌倉や江ノ島大磯など魅力的な観光スポットが多く存在しており、県と湘南地域の4市3町では、シェアサイクルを活用して観光客の利便性を高めることによって、湘南地域の観光地としての魅力を向上させることを目的として平成29年12月に湘南地域自転車観光推進協議会を設立しました。
※県のシェアサイクル体験レポートより
協議会は、シェアサイクル事業を運営する上での課題を整理して、湘南地域でのシェアサイクル事業の定着に繋げるため、民間事業者と協定を締結し、平成元年8月から令和4年3月までの間実証実験を行っています。
実験では、民間事業者に湘南地域で実際にシェアサイクル事業を実施していただき、県や市町は地元との調整や自転車を停めるサイクルポートを設置する土地の無償貸し付けなどの支援を行っています。
佐藤 県の役割と予算は
課長 関係機関との調整や土地の県有地の無償提供を行い、予算計上はなし
実証実験事業は民間事業者が主体となっているため、県の役割は事務局として協議会を運営するほか、地域の商店や鉄道事業者など関係事業者との調整、地域住民への事業の周知などを行っています。
さらに、サイクルポートの設置場所として県有地を無償提供しています。現在無償提供している県有地は現在4箇所で、72台のシェアサイクルが設置されていますが、令和4年度以降については今後の調整事項となります。
この事業は、県として歳出予算の計上はなくゼロ予算事業として実施しています。
民間事業者については、実証実験事業を行うに先立ち、平成31年3月に自転車施策や地域経済に精通した有識者と県と4市3町の観光企画課長による審査会を設置し、公募型プロポーザル方式により決定されました。
当初4社から提案があり、うち3社を採用しましたが、その後事業開始までの間に、サイクルポートの設置箇所や運営方法の調整を行う中で、事業の採算がとれないということを理由として2社が辞退され、現在の事業者と締結することとなりました。
佐藤 現時点での課題は
課長 サイクルポートに地域的な偏りが生じている
現在107箇所のサイクルポートで898台の自転車を設置しています。
採算性を確保するためには駅前や利用客が多い施設を中心としてポートの設置箇所を拡大する必要がありますが、現在寒川町と二宮町にサイクルポートが設置されておらず、大磯町も7箇所しか設置されていないなど地域的な偏りが生じているとのことです。
さらに、現在県内では複数の事業形態でシェアサイクル事業が展開されていますが、それぞれ運用施設が異なるため、相互に乗り入れができない課題があります。
こうした課題の解消に向けて、協議会の構成員と連携して検討と調整を行っているとのことです。
佐藤 実証事件は令和4年度までだが、今後の方向性は
課長 協議会の運営自体は継続し、民間事業者と連携しながらさらなる観光振興につなげる
令和4年度以降は県や市による土地の無償貸し付けは終了し、民間事業者が自ら採算性を確保して自立的に運営する体制に移行する考えです。
シェアサイクル事業は観光客の利便性向上に繋がるだけではなく、利用者の利用データから、観光客の動向を分析して、観光プロモーションに繋げていけるということも期待できるため、令和4年度以降も協議会の運営自体は継続し、民間事業者と連携しながらさらなる観光振興につなげていくとのことです。
また、今回の実証実験の成果をシェアサイクル事業を導入したいという県内市町村や他の地域があれば、成果を共有して一層の普及や定着に結び付けていきたいとの答弁でした。
佐藤も以前県西部で行っている実証実験を見させていただきました。
(詳細はこちらのブログから)
先日も厚木市でeバイク(電動アシスト自転車)を利用した環境省モデル事業が行われたことや、最近藤沢市では電動キックボードの実証実験を行っていると伺っています。
地域を周遊する手段として有効なほか、コロナ禍のこのような時期だからこそ検討できることも多いと考えます。
その土地に合った管理やコストで実施できる方法があるとため、県として検討することを求めました。
【アンケートを実施しています】
今後の愛甲郡の観光促進、住民生活向上への取組みとして皆様のお声を聞かせてください。
簡単なアンケートになりますので、下記URLより是非ご回答よろしくお願いいたします。
(こちらのアンケートは町内外問わず、回答をお願いしております。)
<アンケート回答はこちら>
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